特別展示品の国宝「阿育王塔」

今回『特別展 中国王朝の至宝』最大の見所にもなっている展示品は「阿育王塔」(あいくおうとう)です。時代は作品の銘文から北栄時代の1011年の作品ということが分かりました。高さは1メートルを超えた119センチメートルという大きな作品で、他に例がない傑出した工芸品でありまた大きさを誇るため「塔王」と称されています。

『特別展 中国王朝の至宝』:第五章と特別展示品

栄華を誇った「唐」は9年にも及んだ「安史の乱」もしくは「安禄山の乱」の呼ばれる大規模な反乱で国威も傷つきまた疲弊しました。そのため、中央アジアだけではなく西域させも保持することが難しくなったため、「唐」の国境は次第に縮小して世界帝国となっていた力を失っていきました。そして唐は滅び五代十国(ごだいじっこく)という小国が興した乱世となりました。それを収めたのが「宋王朝」です。そして「宋王朝」と時を同じくして中国の北部では、契丹族(きったんぞく)が勢力をのばし「遼王朝」を打ち立てます。そして「遼」王朝はやがて南方へと進行していきその勢力は「宋」を圧迫するまでになりました。

「遼」の文化は、漢族の伝統文化とそして仏教文化の影響を強く受け、そこに民族的な要素を融合した奔放な力強さにあふれた「遼」独自の文化を生み出し、それは金銀器や石彫に顕著にみることができます。「宋」の文化は、漢族の伝統文化をより深く深下していき、深い精神性を備えた新たな境地を切り開いていきます。水墨画は、唐の時代の中頃に誕生していますが「宋」の時代が最盛期とされています。それらは中国文化を表現するひとつの頂点にまで昇華させていき、書画や陶磁器などにみることができます。近世の胎動ともいえる「遼」と「宋」という南北の文物を対比することで、広い国土を持つ中国文化の多様性と奥深さをうかがい知ることができるでしょう。

奔放な北方民族文化「遼」と精神性の漢民族文化「宋」

内モンゴルを中心にした中国の北辺を支配した契丹人(キタイ人)と耶律氏(ヤリュート氏)の王朝が「遼」ですが、展示品の一級文物「銀製仮面」は「遼」を建国した契丹人の顔立ちを反映した仮面になっています。この銀製の仮面は、「遼」の貴族の墓の中で墓主の顔に被せたものです。「遼」という民族性に富んだ典型的な作品といえるでしょう。

また、一級文物「歩揺冠飾」(ほようかんしょく)は、冠に取り付ける飾りの一種になっています。中国の北方では古くから装身具などに金銀を多用したものを制作していました。これらも、北方文化に連なる「遼」の文化のさきがけともいえる作品で、おそらく作られたのは3世紀から4世紀の作品になっています。

展示品の一級文物「舎利容器」(しゃりようき)は、現:浙江省杭州市で当時南宋の都の南方に位置する寺院址から出土した金銀銅製の舎利容器です。仏教文化の一面を表し、また漢民族の伝統文化を背景にして、さらに洗練された仏教文化が現れている作品になっています。同じく仏教に関係する品で、一級文物の「千仏磚」(せんぶつせん)はたいへん希少な遺品になっています。形作りで複数の仏像をひとつの磚(レンガ)に表わしています。そしてそこに、鮮やかな彩色が施されたものです。北宋時代のこの時期は、インドの仏教の最末期に該当する時期で、各地で仏像や寺院などが破壊され仏僧は北宋から国外へと逃亡した時期でもあります。この時代の仏教信仰の実態を知るうえで希少な遺品です。

特別展示品「阿育王塔」

出土したのは南京市の長干寺(ちょうかんじ)の地下から出土しました。「阿育王塔」は分骨した釈迦の遺骨を納めるために作られた仏塔です。釈迦の遺骨は、アショーカ王が仏法で国を治めるために、釈迦の遺骨を8万4千基の塔に分骨させた。という伝承もあります。「阿育王塔」は古代インドのアショカ王(阿育王)の故事で、八万四千の仏塔を造立したというものにちなんでいます。今回の展示品「阿育王塔」の形式は、五代十国時代の呉越の銭弘俶(せんこうしゃく)が制作させた、八万四千塔に倣ったものとみられます。

ただし、従来の銭弘俶の「阿育王塔」は、高さが30㎝内外にとどまっています。そして他の阿育王塔もいずれも青銅で鋳造されていて高さも20cm~30cm程度でした。今回の展示は高さ119cmの大きさで、さらに銀板に金が塗られて、さらにはメノウ玉・ガラス玉・水晶玉も多数はめ込まれた、規格外の大きさと豪勢きわまりない優れた出来栄えを誇る逸品になっています。そのため、中国の関係者は、仏塔の王様「塔王」とこの作品を称して、敬意と賛嘆の念をもって接しています。出土した南京市以外では初となる公開の運びとなりました。他を見ない圧倒的な存在感を放っている仏塔の姿をになっています。

『特別展 中国王朝の至宝』特別展示品の国宝「阿育王塔」など一級国宝がすごい

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